2025年のテーマ
グリーグチクルスへのお誘い
2025年はノルウェーを代表する作曲家エドヴァルド・ハーゲルップ・グリーグ(1843-1907)のピアノ作品を聴きながらその生涯を追ってみましょう。
ナポレオン戦争後のヨーロッパでは、それまで他国の支配下にあった被抑圧民族のナショナリズムが高揚し、民族主義が一斉に活発になっていました。19世紀後半のノルウェーもまた民族のアイデンティティ(=ノルウェーらしさ)を探求しながら、独立への道を探っていました。
そんな時代に生まれたのがグリーグです。ノルウェーの自然・歴史・神話・民話・民族音楽・人々の暮らしをこよなく愛した彼の音楽にはそうした「ノルウェーらしさ」が色濃く反映されています。グリーグは自国の民族音楽の感覚を自作に取り入れることの喜びについて以下のように語っています。「 ノルウェーの芸術家は素晴らしい使命を受けている。私はこれを世界の誰とも交換したくないと思った!」
グリーグの音楽はノルウェーだけでなく、今も世界中で演奏され、聴かれ続けています。そう、まさにグリーグはローカルであることを極めた結果、グローバルな存在になったのです。
「曲造りの素材はベルゲン(グリーグの生地)にあります。自然の美しさ、人々の生活、町の活気がわたしにインスピレーションを与えてくれます。波止場のにおいをかぐと、胸がわくわくするのです。わたしの音楽は、港にあがったタラの匂いを思い出させます。」
(グリーグ)